……っぽい。
「お二組とも、俺から買って頂ければお値段は勉強させて頂きます。特に橘さんは金額が大きくなることも予想できますので、その点でも、色々とご相談を承るつもりです」
「はい」
「ありがとう、香久山さん」
ビジネスモードの香久山さんにそれぞれにお礼を言って、さっそく手元のカタログをペラペラと捲り、順番に商品を眺めていく。
お値段は、ピンからキリまで。
この際だから奮発するつもりで予算額を決めていたけれど、安くても丈夫そうで可愛らしいものが多々あって、自分でアレンジなんかもすれば私好みの家具にできそうな気がしてくる。
「でも、妥協はしちゃいけませんよ」
「え?」
香久山さんの言葉に顔を上げる。
私の心を見透かしているかのような笑顔を浮かべた香久山さんは、しほり夫婦と私の目をそれぞれに見つめながらこう言う。
「俺の仕事は家具で家を守ることです。家……つまりは、そこで暮らす家族のことですね。だから、安いのでもいっかーって妥協して買ってもらうよりも、家族みんなが思い入れを持って使ってもらえる家具をお勧めしたいんです。値段は別に関係ありません。高くても安くても、家具は家具です。でも俺は、家具も生き物だと思ってるんですよ。だから、使う人に大切にしてもらえる家具をこの手で勧めたいんです」