……っぽい。
「笠松……?」
「……」
しかし、笠松は浮かない表情で頬杖をつき、窓の外をぼんやりと眺めていて、どうやら私の声は笠松の耳には入っていないようだった。
クイ、と笠松のシャツを引く。
そこでようやく我に返った笠松は、私に「誘っちゃダメですよ、まだ昼間なんですから」と意味深な台詞を色気たっぷりに耳打ちしてくる。
思わずパッと手を放してエロ松の頭をポカリと叩けば、笠松は「かっわいー」とまた意味深に呟き、いつものように笑ったけれど……。
「……、……」
物思いに耽る顔になんとなく引っかかるものを感じてしまって、どうしてそんな顔で窓の外を眺めていたのかを尋ねることは憚られた。
思えば近頃の笠松はこうして物思いに耽ることがめっきりと増え、私が部屋のパンフレットを眺めていると、ベランダで一服をしてくる。
何かを考えているのは分かるのだけれど、言ってくれないから分からないし、そのモヤモヤとした消化不良感が私を不安にさせている。
そんな私を知ってか知らずか。
「あ、パトカーですね」
「……だねぇ」
笠松は、ウーウーとサイレンを鳴らし、赤ランプを回転させて喫茶店前の道路を走っていく白と黒の憎いヤツに終始ご執心のようだった。