……っぽい。
 
それから少しすると、窓際席に席を取っていた私たちの目にぽつぽつと雨粒が見えはじめた。

今日は蒸し暑く、空もどんよりと曇っていて、いつ雨が降り出してもおかしくない空模様だったので、皆一様に傘の準備をしてきている。

「本降りになる前に帰ろうか」「そうだね、拓ちゃんもいるし、そろそろお暇しようかな」と相談し合ったしほり夫婦は、自分たちのお会計分をテーブルに置くと「今度お店にも顔を出します」と香久山さんと約束をし、3人仲睦まじく喫茶店をあとにしていった。


「まっつんたちは、どうする?」


一気に人数が半分になれば、なんとなくこれでお開きのムードになるのは致し方ないこと。

香久山さんは笠松にそう訊ねたけれど、ズボンの後ろポケットを気にしている素振りが覗えるので、気を利かせて帰るつもりかもしれない。


「俺らはもう少しブラブラしてから帰るかな」

「そっか、んじゃ俺も」

「おー、色々サンキュー」

「おー、気にすんな」


やっぱりそうだ。

しほり夫婦と同じように自分のお会計分をテーブルに置いて立ち上がった香久山さんは、笠松と親友らしい緩いやり取りをすると、これもまた緩くヒラヒラと手を振りながら、彼には些か狭かろう通路をのっしのっしと歩きはじめた。
 
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