……っぽい。
 
笠松は、意外にもあっさりとハンバーグと引き換えに許してくれると言い、なんでも服従するつもりでいた私は拍子抜けしてしまった。

ぽかんと口を開けて見つめる私に「行きましょう」と言って席を立った笠松は、伝票や各々のお会計分としてテーブルに置かれているお金を持ち、右手を差し出して私を促す。

まあ、ハンバーグで許してもらえるなら好きなだけ焼いてあげるけれど、でも、うーん……。

やっぱり笠松、ちょっと変、かも。


それでも、店を出て、一つの傘に寄り添いながら2人で入り雨の街を歩きはじめると途端に浮かれた気分になってしまうのだから、笠松マジックはやはりすごいとしか言いようがない。

「あっちにさっきのパトカー止まってるみたいですね、ちょっと見に行きましょう」なんて野次馬根性むき出しの笠松につき合い、子供だーなんて笑いながら手を繋いで歩いていれば、ちょっとの不安なんてすぐに吹き飛ぶ。


「あらら、女の人たちが揉めてるね」

「男を取り合う修羅場、ってヤツですかね」

「かもしれないねぇ……」


現場へ着くと、5〜6人のいい年をした女性たちが、警察官に窘められたり後ろから羽交い絞めにされたりしながら、それでもやいのやいのと罵り合っている光景が目に映った。
 
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