……っぽい。
パトカーのお尻が小さくなっていくにつれ、野次馬たちも徐々にそれぞれの目的を思い出したようにゾロゾロと散りはじめ、その場はあっという間に元通りの情景に戻っていった。
いつの間にか、事の顛末を最初から最後まで語っていたカップルの声も聞こえなくなり、笠松が差してくれている傘に当たる雨粒の音が、雑踏の喧騒に紛れて聞こえるだけだ。
雑貨屋さん、服屋さん、カフェやクレープ屋さんに美容室など、多種類のお店が競い合うように軒を連ねている、いつも人が賑やかに溢れ返っているこの通りに起きた珍事件。
女性たちが取っ組み合う原因になった真人だけが警察に事情を聞かれないわけもなく、おそらくは、腰を抜かして動けないでいるところを真っ先にパトカーに乗せられたのだろう。
何やってんだ、あの人……。
ほんとバカである。
「よかったですね、先輩」
「ん? なにが?」
私の肩に腕を回し、至近距離で見下ろしてくる笠松に首を傾げて目をパチクリさせる。
私の心境的には、よかったというよりもホトホト呆れたという感じなので、笠松の言った意図が、あまりよく分からなかった。
すると。