……っぽい。
 
「……言ってよ、ちゃんと。考えるから」


笠松の匂いがする枕に顔を埋め、切なくてきゅうきゅう締まる胸でここにいない相手に呟く。

正直、笠松の考えを察せないわけじゃない。

けれど、笠松が今、どういう気持ちで、どういうことを考えて、どういうことを伝えたいのかをちゃんと言ってもらえないと、柄にもなく不安に負けて泣きたくなっちゃうんだよ。


好きなのに遠い。

近くにいるのに相手が見えない。

不安になる自分なんて嫌い。

お気楽クラゲは一体どこに行ってしまったというのだろう、笠松の匂いに包まれて、笠松のことをこんなにも考えて、泣きたくなるくらい、どうしようもなく好きなのに。


「ふぇ……」


1人をいいことに、ちょっとだけ、今だけ、笠松を想って泣かせてもらってもいいですか。

らしくない私と、らしくない笠松。

涙で流れてしまえ。





--ピンポーン、ピンポーン。

あれ、笠松帰ってきた?


「はいはい、今開けますよ〜……」


インターホンが来客を知らせる音で徐々に意識が覚醒していった私は、布団を蹴っ飛ばして寝ていた自分のお腹をモゾモゾとしまいながら、玄関先のモニターへと急いだ。
 
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