……っぽい。
どうやらあのまま眠ってしまったらしく、インターホンの音で目覚めた今は、時刻を確かめてみれば、午後4時を少し回ったところ。
朝はあんなに晴れていたのに、外で雨が降っている音が静かな部屋に小さく反響している。
「珍しいな、笠松のくせに入ってこないや」
まだ夏風邪のダルさが体中に残っていて、精一杯の速度でものろのろとしか動けない私を急かすように、ピンポーンとまたチャイムが鳴る。
寝起きなのと風邪のせいで思考回路が鈍りまくりの頭では、来客なのか笠松が帰ってきたのかもよく分からず、そんな頭でようやく思い至った真っ当な理由は、鍵を落として中に入れない笠松がインターホンを鳴らしている、だった。
うん、我ながら冴えている。
「……ん?」
けれど、モニターの画面に映っていたのは、笠松ではなく女の人で、モニターを見たらすぐに玄関の鍵を開けるつもりでいた私の足は、その場にしばし張り付けられた。
それでもまた鳴るインターホン。
その音に弾かれるようにして我に返った私は、とにかく鍵を開けなくてはと思い至り、「お待たせしちゃってすみません」と謝りながらドアを開け、目の前の女性と対峙した。