……っぽい。
「あれ、ここ、ジュ……笠松準之助の……」
「……ああ!はい!ここです!合ってます!」
笠松ではなく私が出てきたことに心底驚いた顔をし、目を丸くしながらたどたどしく言葉を紡いだ彼女に、なぜかハキハキ答えてしまった。
お猿のアイアイみたいに大きい目の、とても可愛らしい容姿に一瞬でズッキュンとハートを撃ち抜かれたこともあるけれど、彼女の髪や服からポタポタと雨の雫が垂れ、床に小さな水たまりを作っていることにも驚いてしまって。
あ、でも、タオル……!
「とにかく中に入ってください」
「……え?」
「風邪引かせたら笠松に怒られれちゃいます」
不思議そうに、あるいは不審げに私の顔を凝視している彼女の腕を引き、玄関に上げた。
「今タオル持ってきますから」と茫然と玄関に立ち竦む彼女に告げて、バスルームから適当にバスタオルを取って急いで戻る。
笠松の名前を口にしたということは間違いなく知り合いで、なら部屋を知っていても不思議じゃないし、何よりずぶ濡れのまま帰せない。
たまたま近くで雨に降られてしまったので雨宿りをさせてもらいに来たのだとしたら、めいいっぱいおもてなしして差し上げなくては!