……っぽい。
「寝たふりとか無理。マジ寝する」
「は?」
「風邪薬飲むの忘れた。頭クラクラする……」
「じゃあ、もう寝てください」
「……そうします」
ここはもっと、こう……込み上げるものがあっても良さそうな場面だけれど、そんな甘くも辛くもないやり取りをして、腕を解いた呆れ顔の笠松と額を突き合わせてクスクス笑い合う。
笠松が当然のように私をお姫様抱っこしてベッドまで運ぼうとするので、私は当然ジタバタもがき、けれど途端に頭にズッキーン!と痛みが走ったため、仕方なくお姫様になる。
ベッド脇のテーブルには、朝、笠松が置いていったままの風邪薬とミネラルウォーターが手つかずのまま放置されていて、背後から笠松に脅迫じみた恐ろしいため息をつかれつつも、それを飲むと、私はすぐに横になった。
笠松は、最後に布団を丁寧に掛け直し、私の頭を名残惜しそうに何度か撫でたあと、短く息を吐き出して“お客さん”と対峙する。
「……久しぶり、千晶」
「ジュンノ、元気そうだね……」
そんなやり取りから始まった会話を背中で聞きながら、私はゆっくりと目を閉じた。