……っぽい。
「……無敵な彼女は、これから先、どういう展開になろうとも泣かないモンなんです」
頭に残る笠松の大きな手の感覚や体温が、じわりじわりと私の中に浸透していく感覚を感じながら、誰にも聞こえないよう、小さな小さな声で自分自身に発破をかける。
本当は全部分かっていた。
鳴らされ続けたインターホンとモニター越しに初めて彼女を見た瞬間から、千晶さんだって、笠松に会いに来たんだって女の勘が囁いた。
私に警戒させないため、あるいは千晶さん自身が私に警戒されないために“瀧川”と咄嗟に名乗ったのか、笠松談の『医者に持っていかれた』という医師とスピード結婚をして苗字が変わったのか、その真相は分からない。
けれど、だからこそ私が千晶さんを引き止め、笠松と話をさせてあげなきゃいけないと思った。
色々と抱えた顔をしていたのだ、千晶さんは。
笠松、あとで怒るかな……。
勝手に元カノさんを部屋に上げて、ネグリジェ貸して、一緒にオムライス食べて、ノンアルで酔っ払ってたって聞いたら。
きっと白目だな、こりゃ。
いざ寝るとなれば目が冴えてしまうんじゃないか思ったけれど、不思議なことに笠松の白目顔を想像していると間もなくフワフワと心地い感覚が襲ってきて、私はすぐに意識を手放せた。
……白目マジック、半端ない。