……っぽい。
だからネグリジェ似合ってないし、と思いつつも言ったら怒られそうなので心のツッコミに留め、俺は千晶の言う“顔が見たくなった”というその真意を、色々疲れた頭で考えてみる。
ケンカ別れも同然の別れ方をしたため、お互いに納得いくまで話し合ったとか、後腐れなく別れたとか、そういう感覚はあまりないけれど、でも千晶は『せいぜい珍獣とお幸せにっ‼』と言って出て行ったわけだし、なんだかんだで俺を応援してくれているものだとばかり……。
ん?
ほんと千晶、何しに来た?
顔が見たくなったと言われたところで、実際に今こうして見ているわけだし、用事なら済んだはずなのに帰らないって、どういうこと?
「ふはっ!ジュンノってば、珍獣化激しすぎ」
「は?」
いきなり吹き出した千晶に目が点になる。
近くで先輩が寝ているので、千晶も俺もあまり大きい声で会話はできないが、それでも千晶は気を抜くと大きくなりそうな笑い声を必死で抑えているような、奇妙な笑い方をしていて。
自分の珍獣化にも、千晶が会いに来たことにも全く心当たりのない俺は、チラチラとこちらを見てはその都度おかしそうに笑う元カノに、あの頃は一つも感じなかった“ドン引き”というヤツを、今頃になって感じてしまった。