……っぽい。
ほんっと何してんだよカグ、とカグの筋肉を一つずつ脂肪に変えていく想像をしながらぐっと押し黙っていると、千晶がまた口を開く。
「ジュンノ、橘さんと離れたくないんでしょ。だから本格的に部屋を出て行く準備を始めたとたん、元気なくなったんだよね? でも、カグちゃんもだけど、橘さんだってジュンノの微妙な変化に気づいてる。橘さん、部屋から出てきたとき、ちょっと泣いた跡が残ってたの」
「……」
「一緒に住もうって言ったり、結婚してくれって言ったり、何か橘さんにそれらしい行動起こした? 橘さんが不安にならないように、ちゃんと自分の気持ちを打ち明けてあげてる?」
矢継ぎ早に言われて、ぐうの音も出ない。
あのクラゲ珍獣が俺の変化に気づいていて、そのことで不安になっていて、ちょっと泣いていただって……? いつもと何も変わらない様子だったし、全然そんな素振りもなかったのに?
ということは、俺に気づかれないように、ずっと隠していたっていうことか?
ていうか、俺が先輩をナメすぎていただけか。
話してもらえないのだから不安に思わせていたって不思議じゃなかったし、今日だって千晶を引き止めてくれていたし、先輩は先輩なりに状況を読んで行動していたわけか……。