……っぽい。
そこから、しばしの沈黙。
俺はいい加減炭酸が抜けてマズくなったノンアルを一気に飲み干し、千晶はしけって軽快な音が出なくなったポテチを何枚かかじった。
部屋にはカチコチと目覚まし時計の秒針の音が響き、その音の間を縫うようにして、規則正しい先輩の寝息がスースーと聞こえるだけだ。
「……私、いつの間にか橘さんのペースにすっかりハマってて。いろんな話をしているうちに、橘さんがやけに可愛く思えてきてね。やっぱり橘さんもジュンノの話をしているときが一番幸せそうな顔なの。だから、適わないなーって、ジュンノが帰ってくるまでは思ってたんだ」
その心地いい静寂を破ったのは千晶だった。
小さく息をつくと、赤い目をして微笑む。
「それからは、ジュンノにえっちしてって迫った通り。私、自分でもこんなに往生際が悪い女だって知らなかったよ。でもこれで、当たって砕けて前へ進める気がする。……ありがとね」
「いや、俺は全然……」
「いいの、いいの。橘さん、言ってたんだ。私が計算して雨に打たれて部屋に来たことを仄めかしたら、当たり前みたいな口調で『笠松なら間違いなく部屋に上げます』って。咄嗟に瀧川なんて名乗っちゃったけど、いくら珍獣でも元カノだって気づかないはずないもんね」
「先輩は、そういう人だよ」