……っぽい。
 
言うと、千晶はしみじみ頷く。

それから、ふと思い出したように口を開いた。


「ていうか、橘さんから聞いたんだけど、ジュンノ、本当は“準ちゃん”って呼ばれるのが昔からの夢だったんだって? なんで最初に言わないのよ。私、ずっとジュンノの夢を叶えてあげられてなかったんじゃない。ショックだわ」

「いや、それは……」


何を言っているんだ、あのクラゲ珍獣は!

ほんっとにあの人、侮れない……!

咄嗟に返す言葉もなく、静かに口ごもる俺に不敵に笑った千晶は、しかしさらにとんでもない隠し玉をポイポイと俺の目の前に投下した。


「あと、橘さんには、ジュンノがカグちゃんから影響を受けてマッチョになろうとしたこと、話したよ。プロテインを大量に通販で買ったんたけど、似合わないからって私に止められて全部カグちゃんに売りつけたんだよね?」

「うっ……」

「あとあと、童貞を捨てるときは、いつゴムを付けるか分からなかったから、家からずーっと付けてデートしてたとか。就職試験に全然受からなくて超ネガティブになっていたとか、何もないところで転んで足を骨折したことがあるとか、言ったかな。もう自分が瀬川なのか瀧川なのか分かんなくなっちゃって。ジュンノの武勇伝、たくさん聞かせちゃったよ。ごめんネ」

「……」
 
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