……っぽい。
「なんですか、その奇声」
「いや、寝てると思ってたから……」
「先輩はメガネも似合いますね」
「うっ……」
背中のほうで笠松がクスクス笑う。
首筋に顔を埋められているので、そこが笠松の息がかかるたびにくすぐったくて、メガネで遊んでいた恥ずかしさも相まり、やけに熱い。
「心配してるといけないんで言っておきますけど、千晶とは何もありませんでしたから。色々話して、お互いにスッキリもしました。先輩が千晶だと分かっていながら引き止めてくれていたおかげです。ありがとうございました」
「……うん」
「あと、俺の昔話をどういうふうに聞いたか知りませんけど、あの人、たぶん先輩に--」
「うん。私に託すつもりで、たくさん話してくれたって分かってる。笠松のこと」
笠松の言葉の続きを、そっと引き継ぐ。
掛けていたメガネを外し、弦の部分を指でなぞっていると、千晶さんが語ってくれた笠松の武勇伝の数々が一つずつ思い出される。
プロテイン事件、ゴム事件、骨折事件。
ほかにも、就職先が決まらなくてネガティブになっていたこととか、ハンバーグを焼いていただけなのになぜかファイヤーしちゃったとか。