……っぽい。
 
「メガネ割れちゃったんで、これからも同居を続ける件、前向きに考えてみてください」

「うん、意味不明だよね」

「でも……本気ですから、俺」

「うん」


まったくもう、何にかこつけて前向きに検討させるつもりなんだろうか、この男は。

それでも笠松の言わんとすることが悲しいかな分かってしまうのが29歳の崖っぷちというもので、女性には男性に比べて様々な“リミット”があるゆえに、笠松はえらく本気なのだ。

一番はやっぱり子供のこと、だろうと思う。


しほりの愛息子の拓人くんの影響で笠松も私も前にも増して子供好きになっているし、酔うと笠松はよく「最低3人は欲しい」と言う。

産むとなったら腹をくくって産むしかないけれど、現実問題、お金の面もきっちり計画を立てて管理しなければならないし、若いうちから笠松にそういう面で不自由をかけさせてしまうのは、私的になかなか度胸がいる。


笠松は子煩悩だ。

拓人くんと接するときの様子からも、ベビーカーに乗っている赤ちゃんを見て「連れて帰りたい」とか言ったり、迷子の子を見つけて私そっちのけで一緒に親を探すところを見ても、きっと自分の子供には親バカになるだろうと思う。

でも。
 
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