……っぽい。
 
「笠松には野望とかないの?」


メガネの亡骸を拾い集めている笠松に、どうしても聞かずにはいられなかった。

私とどうこうなるということは、自分の夢や望む未来をある程度犠牲にするということで、ほとんど事務員みたいな位置付けの私とは違い、笠松なら努力や実力次第ではもっともっと上を目指せる位置にいるのではないだろうか。

とどのつまり、笠松の足枷にはなりたくない。

私のせいで笠松がステップアップできるチャンスを自ら棒に振るようなことがあったら、私は絶対に、自分が許せないだろう。


「野望ですか……そうだなあ、先輩と死ぬまで一緒にいることですかね。あと、野球チームを組めるくらい子供を産んでもらうことです」

「……3人じゃなかったっけ?」

「野望ですから」

「……」


うーん、そういうんじゃないんだけど……。

ニコニコ笑って夢を語る笠松を見ていると、急に現実思考になった私が、あれやこれやと理由を作って結婚を阻止しようとしているように思えてくるのは、どうしてだろう。


「とりあえず、軽くシャワー浴びて朝ご飯食べますか。メガネ買うのにつき合ってください」

「うん、イけるメガネ、チョイスするわ」

「おー、頼もしい」
 
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