……っぽい。
しかし。
「うへへ……もーらいっ」
「あーっ、先輩ずるい!ひどい!」
散々考えた挙げ句、本日の私は笠松の手にある器から自分でさくらんぼを取る選択をした。
……病み上がりだし、と理由を作って。
途端に笠松は私に非難じみた目を向け、口からは「空気が読めない」だの「この俺を焦らすなんていい度胸してますね」などと、わりとひどい文句を吐き出されてしまったけれど、最終的には、私と同じことを思い至ったらしく。
「先輩、病み上がりですしね」
狂犬は子犬に戻った。
そうして無事、私は、本日のメニューである白身魚のフライとフルーツトマトのサラダ、そこでなぜか和風のなめこと豆腐の味噌汁を作ることができ、食後に笠松が半分は食べたさくらんぼを、なぜかまた半分こして食べた。
……うーむ、笠松から結婚の申し入れがあった今日の案件は、明日、しほりに相談しよう。
私が何をどう不安に思っているのかもきちんと話して、何かしらのアドバイスをもらえたら、何か答えが見えてくるかもしれない。
プロポーズなんて未知の世界すぎて、正直なところ、私には手に負えそうにないのである。