……っぽい。
しほりの思わぬ冷たい言い方にドクンと大きく心臓が脈打ち、しかし冷たくされる意味を測り兼ね、眉根を寄せて聞き返す。
もしかしてしほり、誠治さんとケンカでもしちゃったのかな? 私が昨日の話をしだしてからあんまり機嫌がよろしくないみたいだし、完全に相談するタイミングを間違えちゃった?
ドキドキハラハラしながら、しほりの様子をじっと窺っていると、離乳食後のおっぱいを幸せそうな顔で飲んでいる拓人くんを抱き直した彼女は、難しい顔をして私に言う。
「じゃあ、私が笠松君とは結婚しないほうがいいって言ったら、海月はその通りにする? 逆もそうよ? 笠松君と結婚したほうが絶対にいいって私が言ったら、海月は今のモヤモヤを笠松君本人に言わないまま結婚しちゃう?」
「……いや、それは……どうだろ……」
うーむと唸り、答えを捻り出す。
結婚するなと言われても、結婚したほうがいいと言われても、そんなに簡単には、はいそうします、とはならないし、できるわけもない。
すると。
「それだけ分かっていれば、あとは笠松君と納得いくまで話して、海月自身が答えを出さなきゃ。正直、自分に自信が持てない海月の気持ちも分かるよ。私だって姉さん女房なんだから。でも、全部言わないと。そういうことは、年上も年下も、学年も関係ないんだよ」