……っぽい。
 
「でもなあ……。会社の後輩のパンツ借りちゃうって、先輩としてどうなんだろう。緊急事態だからアリなの? やっぱナシなの?」


履く体勢に入るも、なかなか足を入れられないのは、先輩としてのプライドか、それとも単に中央の“窓”に抵抗を感じるからだろうか。


よっぽどのズボラさんでなければ、月一でやってくる女子の日が近くなれば、それなりの準備をして会社なり学校なりへ行くだろう。

けれど、女子の日も終わったばかりで、普通に会社に行って普通に仕事をしていただけなのに部屋がなくなってしまった、という不測の事態用に普段から普通の日パンツを持ち歩いている女子が、果たして日本に何人いるだろうか。

そんなことを悶々と考えていると、あからさまに浮き立った調子の笠松の声が耳に入る。


「せんぱーい、お風呂終わったんなら早く着替えてくださいよー。我ながらけっこう上手にできたんで、冷めないうちに食べましょー」

「……う、うん、そうだね」

「ねえねえ、まだですかー?」

「……」


ちくしょう笠松の奴め、履くかどうかで散々悩むだろうことを見越して、あえてパンツには触れずに声をかけてきやがったな……。

くっそう、どこまで策士な奴だよ笠松準之助。

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