……っぽい。
「あっ!橘さん!」
自分のデスクから鞄を持ち出すと、笠松のところへ一目散に駆けだしていた。
ドアを開けて廊下に飛び出す。
『めんこい課』から一番近いエレベーターで1階まで下りようと思ったのだけれど、あいにく2機あるエレベーターはどちらも使用中で、1階まで下りるものと上へ上るものとに分かれており、課がある10階にエレベーターが到着するには時間がかかりそうだった。
「階段で行こう……!」
10階くらいなら階段で下りられる。
もっと上の階に所属している課の人の中には常日頃から階段を使っている猛者もいると聞いたことがあるし、下りるだけなら余裕だ。
今はとにかく一刻も早く笠松のもとへ駆けつけてあげることが最重要事項であり、それは他ならない彼女である私の役目だと思う。
「笠松君が運ばれた病院の名前、あとでスマホに連絡入れます!新幹線の発着時間も調べて送りますから、先輩は駅に向かってください!」
階段のあるほうへ走り出した私の背中に、大崎ちゃんのなんとも頼もしい声がかかる。
大崎ちゃんと真山課長……特に課長には、彼の立場上の問題もあるだろうからということで笠松と相談し、私たちが同居をしていることやつき合っていることを前から知らせてあった。