……っぽい。
 
いや、こういうわけで倒れたんですよとか、症状はこれこれこうですとか、そういう笠松の詳しい状況が聞きたかったんですけれども……。

おじさまの身のこなしがあまりにスマートだったので、口を開くタイミングを完全に逸してしまった私は、口の形を「あ、」としたまま、ドアを見つめてしばし放心してしまった。

笠松に付き添ってくれていたこのおじさまについても、本社の社員なのか仙台営業所の社員なのかも分からないままだし、1人にされてしまうと、かえってどうしたらいいか分からない。


「……とりあえず、大崎ちゃんにメールしよう」


小さく声に出して言うとメールアプリを開く。

もしかしたら課長には、笠松とキャンペーンを行っていた社員から常に状況を知らせる連絡が入っていたのかもしれないし、今出て行ったおじさまも、私が来たことを報告するために一時的に席を外しただけなのかもしれない。

けれど私からも連絡をしたほうがいいと思う。

課長からも聞くだろうけれど、会社にいるとまで言って常に私をフォローしてくれようとしている大崎ちゃんには、とりわけ私から。

そうしてメールを送り終わると、ベッド脇の椅子に再び腰掛け、笠松の顔をぼんやり眺める。
 
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