……っぽい。
よっぽど疲れていたのか、私が近くでゴソゴソとやっている音にも全く反応せずに眠っている笠松は、会えなかった1ヵ月半の間でずいぶんと日に焼けて黒くなり、髪も伸び、そして、もともと細い体が少し痩せてしまっていた。
否応なしに熱いものが込み上げてくる。
「しんどかったよね……」
笠松の手を取り、自分の頬に引き寄せる。
サイドテーブルで柔らかなオレンジ色の光を灯しているスタンドライトに照らし出された笠松の顔は、深い眠りに落ちていてもなお、何かにじっと耐えているように口が一文字に引き結ばれていて、胸が焼けるように痛い。
反対の腕には点滴の針が固定されており、ポタリ、ポタリと静かに落ちる点滴を見るともなしに見つめていると、こんなになるくらいなら出張のことなんて知らないふりを貫き通していればよかった、無理に行かせるんじゃなかったという後悔が無限に押し寄せてくる。
すると、控えめにコンコンとノックの音がして、三分の一ほどドアがゆっくりと開けられた。
「橘さん、ちょっといいですか?」
目元の涙を急いで拭い、ドアのほうに視線を向けると、連絡を入れ終わったのか、先ほどのスマートな立ち振る舞いのおじさまが私を見てにっこりと微笑み、手招きした。