……っぽい。
「あ、あのね、笠松……」
支離滅裂と言われて順を追って話そうとするものの、胃の奥から込み上げる猛烈な不快感に、思わず口元を押さえてしゃがみ込んでしまう。
ほんの一瞬、フラッシュバックしただけだ。
けれど、一歩間違えれば大惨事になろうかという状況になるということは、それだけの威力があり、一瞬だろうとなんだろうと、とことん私に容赦はないことを物語っている。
「ちょ、先輩っ⁉ マジ大丈夫っすか?」
「う、うん……まあ。えーっと、あれかな? お昼も食べ損ねたからかな、今になって急にお腹が空いてきちゃったのかも」
吐き気を押し戻したところで笠松に立たせてもらいながら、今さらな言い訳をする。
きっと笠松は、私が空腹のあまりに泣きながら電話したとは思っていない。
こういうときの空気はきちんと読める男・笠松だ、私の嘘につき合って「お粥の専門店に行ってみましょっか」と明るい口調で誘ってくれるその心遣いが、とても心地がいい。
「……そこ、美味しい?」
「ええ。二日酔いで食欲がないときとか、外回りで近くに行ったときによく寄ります。まあ、ランチタイムで男1人の客って、いっつも俺しかいないんすけどね」
「うわー、それ恥ずかしくない?」
「けど、美味いんすよ」