……っぽい。
 
笠松の病室は個室だ。

緊急入院やら何やらで、きっと病院側の都合によって個室に割り当てられたのだと思われる。

廊下に出ると、笠松の病室から少し離れたところまで移動し壁際におじさまと並んで立った。


「私、仙台営業所の昆野と申します。今回の仙台でのキャンペーンの責任者をしておりまして、笠松君が倒れてから今まで、ずっと付き添いをしておりました。本社の方やこちらの人間は撤収作業や次の準備が残っているために出払っているのですが……皆を代表してお詫び申し上げます。この度は私どもが申し訳ありませんでした。炎天下の中で着ぐるみなんて、やっぱりやめさせておけばよかったんです……」

「……昆野さん」


薄々そうじゃないかなとは思っていたけれど、昆野さんは俗に言う河童ハゲの頭をしていらっしゃって、頭を下げた瞬間、河童でいうところのお皿の部分が廊下の蛍光灯の光を反射し、ピカリンと虹色に光沢を放った。

まあ、綺麗な頭皮……って、違う違う。


「やめてください、昆野さん、私みたいな下っ端に……どうか頭を上げてください。こちらこそ笠松が申し訳ありません。あの、それでキャンペーンに支障は出なかったんでしょうか?」
 
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