……っぽい。
 
“着ぐるみ”という単語に大いに引っかかりを感じたものの、ここは、こちらも頭を下げて謝罪をするのが礼儀というものである。

そこでようやく頭を上げた昆野さんは、ツルリン頭皮の部分をパシパシと小気味いい音を立てて叩きながら「特に支障は……」と申し訳なさそうな笑顔を添えて言ってくださり、とりあえずキャンペーンのほうだけでも事なきを得られたことに、私はほっと胸を撫で下ろした。
 
笠松が倒れたことはびっくりだったけれど、こういうのは誰が悪いというものでもない。


「で、着ぐるみというのは……?」


一心地ついて尋ねると、昆野さんはスーツのポケットからスマホを取り出し、スラスラと操作したあと「これです」とスマホごと差し出す。

どうやらギャラリーを操作していたようで、受け取り、画面を覗いてみると、子供たちに囲まれた珍妙な着ぐるみが写っており--ん!?

なーんかこれ、超親近感が湧くんですが……。

ナマケモノがクラゲを被ってるって、もしや!?


「ナマケラゲって言うんですって。一癖あってじわじわ可愛いですよね。私、橘さんを一目見てピンときました、あなたにそっくりだ」

「……」


笠松め、なんでこんなものを!

嬉しくなーーい!
 
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