……っぽい。
 
あまりの衝撃に、目の前が白くなる。

気持ちは嬉しいけど、でもだからって……。

画面からフラフラと視線を泳がせ、ようやく反対側の壁に付いている薄いシミで焦点が合う。

すると昆野さんは、それを放心しながら見つめている私に楽しそうな声色で説明を続けた。


「ナマ“ク”ラゲではなくナマ“ケ”ラゲなのが笠松君のこだわりポイントなんだそうです。クラゲは基本、なまものですしね。それにしても本当にじわじわ来るでしょう、クラゲの被り物をしたナマケモノなんて、彼にしか考えつかない」

「……はあ」


正直もう、昆野さんの声が耳に入ってこない。

ナマケモノもクラゲも可愛らしくカスタムされているとはいえ、私を--橘海月そのまんまをキャラクター化した笠松の愛が微妙に怖い……。


笠松は私を、よく「先輩はナマケモノみたいな顔で可愛いです」と斜め45度的なニュアンスでもって可愛い可愛いとベタ褒めしてくる。

コイツ何言ってんの!? と当然ながら最初はあんまり嬉しくなかったけれど、最近では私もまんざらでもないなーと感じてきていたのだ。

これこそ笠松の根気強い恋愛矯正のたまものであり、好きな人から褒められるとなんでも嬉しく感じちゃうマジックである。

と。
 
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