……っぽい。
「笠松君、よっぽどあなたのことが大好きなんでしょうね。暑いから着ぐるみはやめましょうとほかの地区のキャンペーンでも言われてきたみたいですけど、大丈夫ですと言って、中に入ることを頑として譲らなかったそうですよ」
昆野さんが穏やかに語る。
たった今までナマケラゲと笠松の愛に恐れ戦いていたにも関わらず、昆野さんの穏やかな語り口に、じんわり目頭が熱くなってくる。
1ヶ月半も着ぐるみに入り続けるって。
笠松あんた、本物のバカだよ。
そりゃ倒れるさね、常に中は滝汗だろうさね。
「……昆野さん、もしかして笠松が倒れた原因って、脱水症状とかそういうものですか? 疲れも相当溜まっていたでしょうし、そんな体で着ぐるみとか、自殺行為じゃないですか」
スン、と鼻をすすりながら尋ねる。
けれど昆野さんは急に表情を曇らせ、ツルリン頭皮を今度はさすさすと元気なく撫でながら、言いたくなさそうに視線を泳がせた。
「昆野さん……?」
「いや、すみません。我々の仕事は、使いやすさや便利さは当たり前として、特にキャラクター物は最初のインパクトがかなり重要になる仕事じゃないですか。ナマケラゲに好印象だというご意見もあればその逆も……というわけでして、笠松君は今回、特にマイナス印象のご意見をずっと気にしていたようでした」