……っぽい。
顔を上げると、昆野さんは目尻のしわを深めて優しく微笑んでいて、続けてこうも言う。
「笠松君は脱水症状もありましたけど、医師の話ではストレスがかかりすぎていたそうです。まあ、お医者さんではなくても私たちには分かっていましたけど、彼は強いですから。一言も弱音を吐きませんでした。病院に泊まる手続きは済んでいます。だから今夜は、たくさん弱音を聞いてあげてください。橘さんになら観念して話すんじゃないかなと期待してます」
「もちろんです、よきに吐かせます」
すっと指で涙を払って、私も笑顔を作る。
そうか、笠松はストレスと脱水症状で……。
昆野さんからだいたいの話は聞けたし、笠松が目を覚ましたら、とりあえずは一発、何をバカなことで悩んでんのよと軽く頭を叩こうか。
私がバカなら、笠松もバカだ。
まったくもう。
それからすぐ、昆野さんは営業所に戻って仕事を片付けなければならないとかで、「お願いします」と言い残して病院をあとにしていった。
私は私で、いったん病室に戻ってお財布を手に取ると、とりあえずお腹に何か入れようと思い、病院近くのコンビニで晩ご飯にできそうなものを数点とお茶を購入し、病室に戻った。