……っぽい。
笠松が目を覚ましたのは、日付が変わる頃。
それまでの間、看護師さんが点滴を外したり脈拍を測ったりしに来たけれど、笠松はずっと眠ったままで、そのうち私も移動の疲れもあって眠くなってきてしまい、椅子に座ったまま、こっくりこっくり舟を漕いでいた。
「……な、んで、先輩がここにいるんですか?」
驚きを隠せないそんな声で浮遊していた夢と現実の境目から引き戻されると、こちらに顔を向けて目を見開いている笠松と目が合った。
私はふにゃっと笑顔を作ると、ひらっと手を振り、口をあんぐりと開けている笠松に言う。
「あ。やっほー、久しぶり、笠松」
「……」
「ていうか笠松、ナマケラゲはいかがなものだろう。確かに可愛い。可愛いけど、なんたってじわじわだからね。考えるなら一目見た瞬間に可愛いって思うものを作ってよね」
「ははっ、先輩、相変わらずナマケモノ顔だ」
「なにおう!?」
参ったな……とでも言いたげに、笑いながら手で目元を押さえる笠松の、その手の隙間から、スタンドライトのオレンジ色に反射してキラキラ光る温かいものが、そっと流れた。