……っぽい。
◆珍獣の愛は飼育員の愛をも凌駕する
全国を回っていたここ1ヶ月半の間で、俺はずいぶん、先輩に助けられてきたように思う。
ナマケラゲの着ぐるみの中に入っていると先輩と常に一緒にいるような感覚でいられたし、加えて“笠松準之助”という原作者としてお客さまの前に立たなくても済んだところが、俺の精神的ダメージをいくらか和らげてくれていた。
俺に白羽の矢が立った、社運をそれなりにかけた新作キャラ作りは、やるしかないと腹を括って引き受けたはいいものの、創作作業は想像以上にキツく、日々上層部からかけられるプレッシャーによって、ストレスはうなぎのぼり。
それでも精神的に壊れずにキャラを仕上げられたのは、先輩がいてくれたからだ。
けれど、キャンペーンに同行することを打診されていたのがバレてしまった日、いてくれるだけで常に一番の精神安定剤であった先輩を泣かせてしまうようなひどい抱き方をしてしまったのは、俺の不徳の致すところである。
どうしてこの世の中で一番愛しい人にあんなひどい抱き方ができたのか、ずっと考えていた。
社運がかかっているのにヒットしなくて大コケになったらどうしようという気持ちを分かってほしかったのか、キャンペーンに同行する覚悟を決めるための起爆剤にしたかったのか。