……っぽい。
この日、先輩と並んで見た夜明けの景色は、今までに見たどれよりも綺麗で、一生忘れられないものとなったことは言うまでもない。
珍獣の愛が飼育員の愛をも凌駕したこの時、この一瞬を永遠に焼き付けるため、俺の肩に寄りかかり眠い目をしている先輩の頬にキスをした。
*
先輩も俺も少し仮眠を取ると、先輩は「仕方ないから上手く説明しに帰らないと」と、若干憂鬱そうな表情を浮かべて会社へ帰っていった。
俺の様子を報告するためと、会社を飛び出してきてしまったことに対する課の面々の好奇の目に一人で耐えるつもりでいるらしい。
そんな先輩の背中を「あの」と呼び止める。
「クラパチ先生の講義、あれは何なんでしたっけ? 人は支え合っているみたいな」
なんとなく気になり、聞いてみる。
先輩の持論は分かったものの、結局上手くまとまらないままだったように思う。
すると。
「笠松も私も、お互いを守りたいって思ってるでしょ? それね、これからは“支え合う”って考えたら肩の力が抜けるんじゃないかと思う。表面的な部分だけじゃなくて、精神的にももっとお互いを必要に思えたり頼り合えるんじゃないかなーっていう、まあ、そういう感じ?」