……っぽい。
「なによ、一人で勝手に笑われると変なこと言ったのかと思っちゃうじゃん。え、なんで? なんでクラパチ先生で笑えるの?」
「秘密です」
「えー!」
全く意味が分かっていない先輩は、無意味に前髪を整えたり、サイドの髪を撫でつけたりしながら、最終的には非難の目を向けてくる。
でも、先輩もそうでしょ?
怒った顔も、泣いた顔も、照れたり幸せそうに笑った顔も、部屋着が超絶ダサかったり、ストッキングあるあるしちゃったり、そういうの全部、俺だから見せられるんですよね。
先輩も俺には自然体でいられるんでしょ?
「ほら、新幹線の時間に間に合わなくなっちゃいますから。帰った、帰った」
「普通にひどいね、その言い方……」
「どうとでも言ってください」
チクチクと小言を言ってくる先輩を回れ右させ、背中を押しながらドアのほうへ押しやる。
さっきの先輩の言葉にどれだけ救われたか、なんとなく悔しいからまだ教えてあげない。
でも、あと1ヶ月半キャンペーンを頑張って帰ってきたとき、先輩が待ちきれなくて玄関ドアの向こうで今か今かと待っていてくれたなら、そのときは教えてあげなくもないですかね。
それまでお預けです。