……っぽい。
「あれ、なんで?」
「ごめん、めっちゃ動揺してる……」
「なんで? いつ? 言ってよ」
いやいや、今それを聞くのがおかしいよ。
タイミングがなんかおかしいよね笠松準之助。
いついつから好き、なんて、じっくり振り返ってみなきゃ分からないし、振り返ってみても分からないかもしれないじゃないの。
「し、知らんっ!」
だから苦し紛れに知らぬ存ぜぬを通してみる。
要は、恥ずかしいから言いたくないのだ。
けれど笠松は、私のそんな思考などお見通しだとでも言いたげに口の端をニヤリと上げて愉しそうに笑うと、なぜか交換条件を出してくる。
「教えてくれないと、いいもの、あげない」
「え、ナマケラゲの着ぐるみ?」
あれ欲しかったんだよ、いつ『めんこい課』に戻ってきてくれるのかしら、戻ってきたらぜひ中に入れさせて頂きたいのですけれども。
が、笠松が首を振るので、違うらしい。
「もっといいもの。綺麗で、小さいやつ」
「南紀白浜の貝殻!ピンクの巻貝!」
「もっとキラキラしてる」
「うーん、ガラス細工の何か……とか?」
「……海月はホント残念だよね」
と、クイズ大会っぽいこのやり取りは、ふるふると力なく頭を振った笠松が、大きなため息をついたことによって、私には全くわけが分からないままに終わってしまった。