……っぽい。
ミソなのが、最初は『興味ない』とか言っておきながら実は……という部分である。
だいたいそうなのだ。
パンパンの鉄板だ。
けれど鉄板だからこそ、読者はなんとなく結末が読めていても、恋人関係に発展するまでの紆余曲折珍道中を楽しむために本を手に取る。
笠松と私の場合はどうだろう?
似通った境遇から同居を始めようとしているのだから、同情する部分も共感する部分も、それなりに多いような気がする。
でも私たちの場合、似通った境遇ゆえに、地雷を踏みあったり、けなし合ったりという逆効果にしかならない気がするのだけれど……。
「でも良かったっす」
「何が? あ、ありがと」
一人、笠松と私の間における恋愛小説化の可能性を否定していると、笠松が私のサラダにドレッシングをかけてくれつつ言った。
お礼を言い、次の笠松の言葉を待っていれば、「思ったより元気そうで」と返ってくる。
「まあ、思い出せば恨み言しか出てこないんだけど、そればっかり言ってても仕方ないしさ。これからやらなきゃいけないことだけを楽しく考えないと。ってことかな」
「先輩、逞しいっす」
「そりゃ、笠松よりかは社会の荒波に揉まれてきたつもりだから。どん底まで落ちても自力で浮上するスキルくらい持ってますさ」