……っぽい。
何の気なしに言ったつもりだったし、私には普通のことだったけれど、思いのほか笠松にとっては新鮮な言葉だったらしい。
目を見開いているアホ面は、なかなか見物だ。
いや、訂正しよう。
昨日今日で見てきた、ちょっと斜に構えるところがあるような笠松には珍しく、自分の中で咀嚼し飲み込もうとしている様子がちらりと窺えて、もしかして笠松は私が思っているより同棲を解消した元カノさんのことで深く傷ついているのかもしれない、と思わされた。
私の中では、同棲も同棲解消も意味が大きい。
結婚したいなと思うから同棲するし、結婚できないなと思うからそれを解消する。
真人との場合はもちろん、結婚したいなと思ったから部屋のスペアキーを渡して、自由に使っていいとまで言っていたわけだけれど、結果はあの通りだったので、もうどうしようもない。
……くたばれ真人。
「実は俺、けっこうなんでもできちゃうタイプだったりするんですよ」
すると笠松は、なぜか語り口調で話し始めた。
おおっ、いきなりどうした⁉ と思いつつも、笠松があまりにも話したそうな顔なので、私は話を聞くため軽くテーブルに身を乗り出す。