……っぽい。
 
「そつがないっていうんですかね。なんでもそれなりにできちゃって、特に苦労した記憶もなくて。器用貧乏、みたいな? まあ、そんな感じで今まで生きてきたんですよ」

「うん、だろうよ」

「ちょっと先輩!?」


ガチャリ、と騒々しく食器の音を立てながら、怒り笑顔の笠松が私に顔を近づけてくる。

初っぱなから出鼻をくじかれて気に障ったのだろう、フガフガと鼻息がうるさい。

でも、会社での笠松を見ていれば分かる。


裏がなさそうな笑顔で近づき、誰とでもすぐに打ち解け、和気あいあいとなったところで上手い具合に相手を転がしはじめ、笠松君からの頼みなら断れない的な空気に持っていく。

そして最終的には、なんでも自分の思い通りに事を運ばせる--そんなワルイオトコ。

……あれ、私も笠松の術中じゃない!?


「ね、呆けてないで続き聞いてもらってもいいですか? ここからが本題なんですよ」


やっべ、笠松に転がされているの私じゃないかよ!と結論に行き着いたとき、ワルイオトコ・笠松から胡乱な目で見つめられる。

咄嗟に「ど、どうぞ……」と返事をするものの、私の意識の半分は確実に宙に浮いてしまった。

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