……っぽい。
やばいやばい、笠松の格好の餌食って、今私でしょ!? 後輩の中で一番懐いてくれていると思っていたのは何かの伏線なんじゃないの!? と頭の中でウーウーと警戒音が鳴り響く。
笠松が自分で言っていた器用貧乏とか、そつがないとか、そういうのとも、ちょっと違う。
こいつはただ、転がし上手なだけだ……!
だから苦労した記憶もない。
なんて嫌なヤツ!
と。
そんなことを考えている間に、笠松は語る。
「元カノは、よくできた子でした。看護師っていう大変な仕事を持っているのに家事もよくやってくれて。彼女が疲れているときに俺が求めても拒むことはありませんでした。実際、相性はかなり良かったほうだと思います」
「へえ……」
「でもある日、医者に持っていかれました」
「それはそれは、ご愁傷さまなことで」
ワルイオトコがステータス男に負ける--たぶんこれ、自然の摂理。
一端のサラリーマンと医者だったら、天秤にかけるまでもなく医者に惹かれるよ、私なら。
話半分で聞きながらも、私はそう思いながら渋面で語る笠松に深々と頭を下げる。
同情がないといえば、嘘になるからだ。