……っぽい。
 
二日酔いで疲れた胃に、きゅーっと染み渡る控え目な味付けがたまらんのです、などと言いながら、笠松はさり気なく私のバッグを奪う。

今日は私も外回りだった。

資料のファイルやら何やらを抱えてあっちこっち歩き回っていたから、彼女特権だろうこのサービスも、ありがたく受けておく。


その外回りのおかげで、こんなことになっているのだけれど、温かいものを胃に入れれば、なんとなく落ち着いてくるのだろうか……。

だったらいいな、と淡い期待を寄せながら、笠松に案内されるまま、お粥専門店へと向かう。

その間も、笠松は無理に話を聞き出そうとするようなことはなく、弱っている私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれ、会話のネタといえば、もっぱらお粥の話題だった。





水族館からお粥専門店までは、ゆっくり歩いても5分とかからない距離にあった。

たまに水族館に行くことはあったけれど、いつも私は駅と水族館の往復という、ちょっとつまらない堅実なルートを使っている。

だから、水族館から向こうの通りがこんなにレトロ可愛い街並みだったとは知らなかったし、そこにお粥専門店なんていうお洒落なお店があることもまた、当然知らなかった。
 
< 4 / 349 >

この作品をシェア

pagetop