……っぽい。
 
家事が下手だった私も悪いんだけどさぁ……と思いながら、笠松の返事を固唾を飲んで待つ。

前もって自分のやり方を教えてくれて、何回か一緒に家事をしてくれたなら、要領も掴めるから笠松のやり方で家事をしてもいいけど。

とも、精一杯の譲歩のつもりで思いながら。


「あ、先輩、家事にヤな思い出ありますね」

「なんで分かるのエスパーかっ!」


けれど笠松はしたり顔でニンマリ笑うと、私のツッコミなど、どこ吹く風といった体で顎に指をかけ、何やら考え事を始めてしまった。

くっそう、笠松め……。

ほんっと食えない男だな、なんか腹立つ!

腹立たしさを押さえ込み、笠松に一泡吹かせる方法は何かないかと考えを巡らせる。

けれど、思いつく前に笠松が口を開く。


「同居のルール、けっこう細かく決めるつもりでいたんですけど、すごくシンプルで、でも絶対的効力がある方法を見つけました。先輩は、黙って俺の言いなりになってください。そしたらたぶん、いろんなことにいちいちカリカリしないで済むんじゃないですか?」

「……はいっ!?」

「先輩は、俺に絶対服従」


ギラリ、目の奥に意地の悪い愉悦の光をぎらつかせた笠松は、キーケースから鍵を1本抜き取ると、私の前にそれを置いた。
 
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