……っぽい。
この鍵は、おそらく部屋の鍵だ。
これを手に取れば、笠松に絶対服従……。
そんな恐ろしいことできるわけあるか!と、目の前にちゃぶ台があったなら迷わずひっくり返す妄想を頭の中で繰り広げる。
実際は頭を抱えてウーウー唸り、珍獣よろしくなっているけれど、でも本当にどうしてこんなことになってしまったのだろうか……?
泣いて電話をかけたらすっ飛んできてくれたじゃない、一生懸命気を使ってくれたじゃない、尊敬してるって言ってくれたじゃない。
それなのになんで?
笠松って実はこういうタイプだったの?
「ね、先輩。先輩のこと、引き受けてあげてもいいって言ってるんです。悪いことは言いません、さっさとこの鍵取っちゃってくださいよ」
「う……」
しおれた花のようにガックリとうなだれる私の視界に、愉しそうにそう言った笠松が、スススと例の鍵をすべり込ませてくる。
鍵を取れば住まいは確保できる、けれど、鍵を取らなければあっという間にホテル代で貯金は消え、最悪野宿もあり得そう……。
ああでも、さっき同居の話に「乗った」って言っちゃったし、今さら断ったら笠松怒る?
と。
「俺のパンツ借りたって会社の人に言いふらしちゃってもいいですか?」
「服従します」