……っぽい。
まあ、それはそれで、全身がラブコメで出来ているような大崎ちゃん辺りは「はうっ‼」と楽しい反応してくれるかもしれないけれど、ほかの社員--とりわけ真山課長辺りには、間違いなく雷を落とされるだろう。
『めんこい課』には課長という鬼がいるのだ。
めんこいものを生み出す課なのに。
怖い怖い。
「それより、今日の夜は先輩の浮気彼氏に会いに行きますから。そのつもりでいてください」
「え、そうなの? なんで?」
大崎ちゃんの「はうっ‼」を楽しむほうを取ったのか、未だ人間に戻るつもりのないらしい笠松に言われて、私はちょっと面食らった。
土日で当面の荷物は持ち出したし、通帳、印鑑等の貴重品の持ち出しにも、抜かりはない。
少しだけど不動産屋さんに行ってパンフレットやチラシを貰ってきたし、あとは折を見て部屋を引き払う手続きや家具の処分を一気にし、予め用意した新しい部屋に引っ越すだけだ。
真人に渡していたスペアキーの回収という最終ミッションは残っているものの、いつものように浮気相手を私の部屋に連れてきたときに中がもぬけの殻だったら、さすがに気づくだろう。
その前に別れられれば万々歳だけれど、最悪、もぬけの殻の部屋で待ち、真人や浮気相手とバトりながら鍵を回収すれば良し。