……っぽい。
そういう計画を立てていたから、笠松がなんで真人に会いに行くなんて言うのかが、ちょっと分からない私なのである。
と。
「彼氏に秘密裏で事を進めるんでしょう? じゃあ先輩はウソが上手にならないと」
「どういうこと?」
「何ヶ月か出張してください。長期出張のときには安全管理のために管理人に鍵を一時的に返す決まりだとかなんとか言って、彼氏から鍵を返してもらうんですよ。引っ越しも家具の処分も、魔法みたいに1日じゃできません。しばらく部屋に近づけない、もっともらしい理由を作らないと。ココ、使いましょう」
笠松は、キョンシーのまま右手の人差し指でこめかみの辺りをつつき、ワルい顔で言う。
人間に戻るつもりはないんだなとか、ひとつも格好がついてないよとか、いろいろと心に引っかかる思いはありつつ、それでも私は、笠松の提案に、まさに目から鱗の思いで聞き入った。
言われてみれば、確かにそうだ。
早々に真人が部屋に近づけない理由を作ってしまったほうが、部屋の処分もはかどるし、修羅場るよりも遥かに鍵を返してもらいやすい。
私って、29歳にもなって無鉄砲なんだろうか。
気づいてしまった欠点に愕然だ……。