……っぽい。
「でもさ、橘。金曜日、なんで会えなかった? 俺、風呂入ってカラダ綺麗にしてたんだけど」
「……っ!」
意表をついた真人の質問に咄嗟に返す言葉がなく、私は自分でも、しまった!と感じるほどのあからさまな反応をしてしまい……。
「あれ。橘、なんか隠してる?」
すぐに勘付かれてしまった。
浮気相手の彼女と一仕事したからシャワー浴び直したんでしょ、つーか頭の中はそれだけか!と言ってやれたら、どんなに清々するか。
けれど、私はあくまで“真人に秘密で”何もかもを処分するつもりでいるので、ここで全てをぶっちゃけるわけには到底いかなかった。
マッハで策を立て直さなければ、様子がおかしい私を疑った真人に身ぐるみを剥がされるようにどんどん嘘がばれ、鍵の回収は難しくなる。
ので。
「え、金曜日、会う約束してたっけ?」
このままではマズいと思った私は、笠松に助けを求め、繋いだままにしている笠松とのラインを、テーブルに置いたスマホをいじる風を装い確認し、質問を質問で応戦する。
笠松ありがと、焼き肉奢る!
「してないけど、いつもご飯用意して待っててくれるじゃん。金曜日に急にフランス出張が決まったからバタバタしてて帰れなかったの?」
「ああうん、そう。会社に泊まり込みで」