……っぽい。
「先輩、気づきましょうよ。あの人、先輩が頼んだお茶代だって出してくれなかったでしょ。先輩の鍵を返したときもそうです。俺は見えなかったけど、先輩はキーケースにジャラジャラ鍵が付いているの、しっかり見てますよね? あれ、たぶん先輩と同じような女の人の鍵です。先輩は3年間もあの人に遊ばれてたんです」
笠松は、真顔でそう断言した。
「なんでそこまで分かるのよ」
「だって先輩、あの人が店を出ていったあと、緊張したって言ってたじゃないですか」
「それは、嘘がばれたら大変だからよ。嘘ついてる間、すごく緊張してたから、つい口をついて出ちゃっただけで……」
「違います。先輩は、無意識のうちにあの人の好みの女性を演じようとしているんです。あの人に釣り合う女性になりたいとか思って頑張っていたかもしれないですけど、それ、全然違いますから。だから、いつも緊張してる。会うと疲れる。良くない行いにも目をつぶれる。責められない、怒れない、戦おうとしない」
「……でも!いつも朝まで一緒にいてくれたよ、スマホも鳴らなかったよ、優しかったよ……」
「それ、ただのあの人のポリシーなんじゃないですか? ほかに何人も女の人を囲ってるってバレないようにするための」