……っぽい。
何も言い返せずに黙っていると、熱くなって口論していた自分をクールダウンさせるためか、笠松はまたグラスにワインを注ぎ、それを一気に煽ると、今度は煙草に火をつけた。
笠松が吐き出した煙りが、テーブルの上の料理をほんの一瞬、白く霞ませる。
「もしかして先輩、あの人に貢がされてたりしてませんよね? ずいぶん仕立てのいいスーツを着てたみたいですけど、まさか先輩が買ってあげたわけじゃないですよね」
「……」
「ああ、それとも、貢がされてるんじゃなかったら結婚詐欺まがいでしょうか。先輩、もういい歳だし、そのうち結婚にはお金が必要だから自分が預かるとか言い出して、先輩の貯金、騙し取られてたかもしれませんね」
けれど笠松は、クールダウンするどころか、ますますヒートアップしていき、呆気にとられる私をよそに根も葉もないことまで疑い始める。
これにはさすがに私も堪忍袋の緒が切れた。
「真人はそこまで最低じゃないよ!」
そこで冒頭の口論に戻る。
けれど言われてみれば全部笠松の言う通りだったりするから、我慢ならずに手を上げてしまったものの、申し訳ないことをしたかもしれない。
思い返せば、これまでにも私は、何度となく痛い目に遭ってきたように思う。