……っぽい。
 
「笠松、いくら笠松でも、言っていいことと悪いことがあるよ。……私、もう寝るね」

「……」


涙をこらえ、すっくと立ち上がる。

絶対に謝ってなんかやるものか。

痛いのは笠松のほっぺたじゃなくて、怒りに任せて上げてしまった右手でもなく、私の心だ!

そこで一晩反省しやがれってんだい!


目の前で呆けた顔をしながら私を見上げている笠松をふんぬっ!と一睨みし、窓際に置かれているヤツのベッドにそそくさと潜り込む。

ここ3日ほど借してもらっているベッドは、やはり1人で寝るには大きいセミダブルのベッドで、寝心地はすこぶるいいものの、元カノさんと寝ていたのだと今さらながらに思い知る。

が、今はそんなのどうでもいい。


「……テーブルのもの、明日食べるから捨てないでね。あと、トマトとモッツアレラのなんちゃら、美味しかった。ありがと」


そう言うと、頭から布団をかぶった。

“海月”という名前を綺麗だと言ってくれた笠松に、ほんのちょっとだけ感謝しながら。





それから何時間経ったのか。

笠松に散々なことを言われた怒りで眠れなかったのではなく、ただ単純にお腹が空いて目が覚めてしまった私は、寝返りを打っても落ち着かず、仕方なく食料を漁ることにした。
 
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