……っぽい。
「笠松、いくら笠松でも、言っていいことと悪いことがあるよ。……私、もう寝るね」
「……」
涙をこらえ、すっくと立ち上がる。
絶対に謝ってなんかやるものか。
痛いのは笠松のほっぺたじゃなくて、怒りに任せて上げてしまった右手でもなく、私の心だ!
そこで一晩反省しやがれってんだい!
目の前で呆けた顔をしながら私を見上げている笠松をふんぬっ!と一睨みし、窓際に置かれているヤツのベッドにそそくさと潜り込む。
ここ3日ほど借してもらっているベッドは、やはり1人で寝るには大きいセミダブルのベッドで、寝心地はすこぶるいいものの、元カノさんと寝ていたのだと今さらながらに思い知る。
が、今はそんなのどうでもいい。
「……テーブルのもの、明日食べるから捨てないでね。あと、トマトとモッツアレラのなんちゃら、美味しかった。ありがと」
そう言うと、頭から布団をかぶった。
“海月”という名前を綺麗だと言ってくれた笠松に、ほんのちょっとだけ感謝しながら。
*
それから何時間経ったのか。
笠松に散々なことを言われた怒りで眠れなかったのではなく、ただ単純にお腹が空いて目が覚めてしまった私は、寝返りを打っても落ち着かず、仕方なく食料を漁ることにした。