……っぽい。
だってしょうがない、トマトとモッツアレラのなんちゃらを少しとワインしか飲んでいないんだもの、そりゃ、お腹だって減る。
ついでにトイレも行きたい。
ぼんやりとしたオレンジ色の間接照明が淡く笠松のワンルームを照らす中、私はそろりとベッドから下り、キッチンへと向かう。
私が動く音以外には何も聞こえないので、笠松はどうやら寝入っているらしい。
ふと目に入ったデジタル時計を手に取りオレンジ色の中で時刻を確かめてみると、午前3時。
そりゃ、笠松だって寝る。
別に私が布団で寝てもよかったのだけれど、お客さま用布団で寝ているのは笠松だ。
床に布団を敷いて寝ている笠松を起こさないよう、ヤツの頭の前を抜き足差し足で通り過ぎながら、やっぱりトイレを先に済ませてから食べたほうがよさそうだなと算段をつける。
--と。
「……すいません、キツイこと言って」
唐突にむっくりと起き上がった黒い影から、そんな言葉が弱々しく発せられた。
一瞬、幽霊かとギョッとしたものの、よく考えてみれば笠松の寝ている前を通り過ぎているところだったと気づき、ほっと胸を撫で下ろす。
「……起きてたんだ」
「寝られるわけないじゃないですか。つーか、なんなんですかね、あの野郎。3年も先輩のこと弄びやがって。男の風上にも置けやしない」