……っぽい。
暗がりの中で笠松が髪をワシャワシャと乱暴に撫で、苛立った長いため息が吐き出された。
ていうか、笠松は私のことを怒っていたんじゃなかったっけ? ん? 一周して、今度は真人に怒りの矛先が向かったの?
忙しいヤツだ……。
「もういいよ。笠松の言う通り、貢がされたり詐欺られる前でよかったんだって。被害は私の体と心と部屋だけだったし。安いもんよ」
「ポジティブっつーか、バカっていうか……」
「笠松あのね!?」
トイレをちょっと我慢して話につき合ってやっているっていうのに、相変わらずひとつもオブラートに包んで話さないヤツだな笠松は。
おでこに手を当て、何度か頭を振ると、気持ちを切り替えるようにして、「ちょっとトイレ行くわ」とため息混じりに私は言う。
我慢しすぎると体に良くない。
けれど1歩踏み出す前に笠松に腕を取られる。
「先輩は可愛いですよ。騙されてても気づかないバカだし、お人好しすぎだし、普通に男モノのパンツ履いちゃうし、部屋着だって超絶ダサいし、住まわせてくれる友達だっていないし」
ひ、ひどすぎる……。
「……でも、可愛い人です。なんか可愛い」
「……」