……っぽい。
 
それがちょっとだけ拗ねているように聞こえたのは、私の聞き間違いか、そうではないのか。

こういうところが、笠松はちょっとお子ちゃまなのかしら、とやれやれと思いながら、少し笠松のほうを振り向き、苦笑いで私は言う。


「分かった。もう言わないよ」


と。


「本当に?」

「……言わないように気をつける」

「言ったらペナルティー」

「えー。どんな?」

「先輩のこと、めっちゃ抱きます」


たった今までは拗ねた5歳児みたくなっていたのに、短い会話を交わすうちにどんどん声に真剣さと微かな男の色気をまとわせていった笠松から、とんでも発言が飛び出した。

あははー、笠松ったら冗談キツいー。

自分がただ遊ばれていただけだったと笠松によって気づかされた今の、このタイミングで、どうして笠松がそんなこと言っちゃうかな。


「分かった、そのときはめっちゃ抱かれるー」


軽く受け流すように言うと、私は今度こそトイレに入り、しっかりと鍵をかけた。

拗ねた声も、真剣で色気のある声も、全部私がまだ女として大丈夫だと励ますためのものだと分かってはいても、やっぱりドキンとする。


「はー……」


トイレの水で流れたのは、私のため息だった。
 
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